ジオシンセティックスとは?


1. ジオシンセティックスの歴史

 ジオシンセティックスは、「ジオ」と「シンセティクス」が合成されできた言葉であり、ジオテキスタイル、ジオメンブレン、ジオコンポジットの総称である。そもそもは建設用の石油化学繊維材料をジオテキスタイルと名づけたのが始まりであり、製品が増えるに従いジオシンセティックスという総称で呼ぶようになった。
 ジオシンセティクスの発想は、古くは紀元前に植物を土の中に入れて構造物を強化するという考えがスタートであり、この植物が産業の発展とともに石油化学製品に置き換わってきたのである。近年では、このような多種多用な材料が開発されており、補強のみならず遮水や排水、保護など多くの箇所で用いられるようになっている。


2. ジオシンセティクスの用語  写真をクリックすると大きくなります

用語 定義 製品例
ジオシンセティックス
geosynthetic
ジオテキスタイル (広義)
geotextile
ジオテキスタイル (狭義)
geotextile
ジオウォーブン
geowoven
たて糸とよこ糸を用いて織った織物で,土木などの用途に使用される製品.単に織物又は織布とも呼ぶ.
ジオノンウォーブン
geononwoven
規則的又は不規則に配列した繊維を製織せずに機械的,化学的又は熱的方法によって結合した不織布,土木などの用途に使用される製品.単に不織布とも呼ぶ.
ジオニット
geoknitted
連続した糸,繊維などによって編目で構成した編物で,土木などの用途に使用される製品.単に編物とも呼ぶ.
ジオグリッド
geogrid
引張抵抗性のある構成要素が連結した規則的な格子構造からなるシート状のもので,土木などの用途に使用される.主に高分子材料からなる製品.
ジオネット
geonet
げき間が構成要素の占める面積より大きい網目構造をもつシート状のもので,土木などの用途に使用される高分子材料の製品.
ジオテキスタイル関連製品
geotextile-related product
狭義のジオテキスタイル,ジオグリッドおよびジオネット以外で,透水性のあるシート状又は帯状の高分子材料からなる土木用途に使用される製品.
ジオメンブレン
geomembrane
透水性の極めて小さい又は不透水性の膜状構造で,土木などの用途に使用される製品.
ジオコンポジット
geocomposite
狭義のジオテキスタイル,ジオグリッド,ジオネット,ジオメンブレンなどを任意に組み合わせて一体化した製品.

ジオシンセティックス用語 (日本工業規格 JIS L 0221)解説より引用

ジオシンセティックス 用    途 用 途 例
ジオウォーブン
geowoven
・軟弱地盤安定
・吸出し防止
・洗掘防止
・堤体防砂
・汚濁防止膜
・沈床
・防砂 軟弱地盤安定工法(敷設材工法)
 軟弱地盤に埋立や盛土を構築する際に引張補強機能を有するジオテキスタイルを用いた表層処理工法である。施工機械のトラフィカビリティの確保と、地盤の局部的な破壊の防止を主な目的とする。
ジオノンウォーブン
geononwoven
・吸出し防止
・洗掘防止
・盛土などの水平排水
・分離
・緩衝材
・軟弱地盤安定
・防草
・盛土補強
・遮水シート保護
・クッション用
・コンクリート養生シート
・舗装強化
連結ブロック工の吸出し防止工
 水面の上下により、連結ブロック背面の土砂が吸い出されるのを防止する。
ジオニット
geoknitted
・フィルター材
・廃棄物処分場
・地下防水用基布
・のり面保護材
のり面保護工
 盛土・切土のり面のエロージョン対策などを目的とし、のり面保護工に使用される。ジオニットと植生基盤材を使用することで、緑化による安定したのり面が形成される。
ジオグリッド
geogrid
・盛土補強
・軟弱地盤安定
盛土補強工(補強土壁工法)
 計画する盛土形状に対して盛土材料の強度不足を補うため、引張補強効果を有するジオグリッドを盛土中に敷設し、土との相互作用で盛土体にせん断強さや引張強さの付与による安定性の高い構造物を築造する。
ジオネット
geonet
・しがら工
・地盤補強
・コンクリート補強
しがら工
 のり面の保護工法、土留め工、網柵工、防風・防砂工などで使用される。埋めころしや表面出しといった方法で施工される。
ジオテキスタイル関連製品
geotextile-related product
・護岸
・法面保護
護岸工
 袋状にしたジオテキスタイルに割石などを充填して、侵食防止する工法である。長期において割石の隙間に土が入り込み、植生され、多自然型工法として用いられる。
ジオメンブレン
geomembrane
・遮水
・トンネル防水
・水路
・護岸(吸出し防止)
・地下防水
・洗掘防止
・屋上防水 遮水工
 廃棄物を直接に地山へ処分した場合、降雨などの影響により地下水を汚染する可能性がある。したがって、廃棄物と地山との間を遮水対策することにより、環境に配慮した対策工となる。
ジオコンポジット
geocomposite
・排水
・地下防水
・法面保護
・護岸
・目地防砂板
・トンネル排水
トンネル排水工
 トンネル工事では、地質の良否以上に湧水の有無ならびに処理が重要であり、湧水に起因する崩壊事故についても多くの報告例がある。よって、トンネルの排水対策は構造物の安定性を確保する上で重要な対策工となる。

 ジオシンセティックス入門(理工図書)より一部引用
ジオテキスタイルを用いた補強土の設計・施工マニュアルより修正引用


3. ジオシンセティクスの適用例

・ 盛土補強
・ 軟弱地盤
・ 排水
・ 吸出し防止
・ 分離
・ のり面保護
・ 遮水


4. ジオシンセティクス関連文献
・ 国際ジオシンセティックス学会日本支部:ジオシンセティックス入門,理工図書
・ 国際ジオシンセティックス学会日本支部:ジオシンセティックス論文集
・ 社団法人 地盤工学会:入門シリーズ24 補強土入門
・ 社団法人 土質工学会:土質基礎ライブラリー29 補強土工法
・ 社団法人 土質工学会:土質基礎ライブラリー40 ジオテキスタイル
・ 株式会社 産業技術サービスセンター:斜面・盛土補強土工法技術総覧
・ 株式会社 産業技術サービスセンター:土木技術者のための実用軟弱地盤対策技術総覧
・ 財団法人 土木研究センター:ジオテキスタイルを用いた補強土の設計・施工マニュアル
・ 財団法人 土木研究センター:ジオテキスタイルを用いた軟弱路床舗装の設計・施工マニュアル−路床/路盤分離材としての利用−
・ RRR工法協会:RRR−B工法(補強盛土工) 設計・施工マニュアル